2017年5月

お洒落して気取ってカフェに行くような人を愛するところは祖父似

午前零時 遠くの空が明るくて 飛べない猫を抱きしめている

星影の隙より垂れる金鎖 夜とはこんなに静かだったか

賑やかな店から出れば賑やかな蛙のこゑに迎へられたり

昭和には場末がありき 死語だよと笑い止まない母の中にも

手を振りて思い出さんとする祖父の言いたいことがわかる 春暁

階段の十二段目で足あげて跨いで通る 猫を飼う家

欠落の形?それとも美の手本?夢の呪いのローマの休日

夕立や 階下を揺らす足のおと



2017年4月

爪よりもちひさき虫の棲む土を掬ひ上げたる母の掌

この世にも地獄がありて 地獄にも吹き出すような思い出があり

「ひらがなのよが好き 下の巻いたとこ」夜中の嫁のよしなし言よ

凹凸の凸が足りないたくさんの一人をのせて地球は回る



2017年3月

つややかに光る桜の力瘤 咲かん咲かんと天を突き刺す

春風はものの命を育まん 積雪の背を吾追い越しぬ

気だるげな星と一瞬目があって 二秒前より寒さも丸い

生命の息吹ぞ風に混ざりたる くしゅんくしゅんと春の挨拶



春と云い

春だと叫び

まだ足りず

耳を澄ませて

ややあって 春



2017年2月

山々の腕(かいな)に抱かれ わが町は笑い疲れてしずかに眠る

神もまたかくて天地を生み出さん タクト慄わす第九の指揮者

人が二人いて陰陽のかたち為す 冷めた紅茶に目もくれぬ午後



2016年12月

大きなる御手であらんや伊勢の神 一せいに鳴る参道の鈴

しろたえの発泡トレーの棺桶よ ぞんざいな手の墓荒らしたち

この一歩踏み越えゆかば暮れ色も赤白黄金踊る元日

去る年を送りし人の耳たぶを微かに揺らす鶏日の声

クリスマス・ツリーもようの鉛筆を叔父に貰いし思い出ひとつ



「大至急!

漂白剤を買ってきて。

心の染みがよく落ちるやつ



2015年以前

瀬戸物のつがいの鶏も別々の方を向くのだ 寄り添いながら

to beという名の自転車(チャリ)に跨りつ 菫畠が夜目には白い

容赦なく蚊を殺す手の汚れかな /2008年夏秋 地区4位

天上に赤置く季節 曼珠沙華 /2008年夏秋 地区2位



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