シナリオ名《暗黒の絶島》
1.GMさまへ
これは「デッドラインヒーローズRPG」のシナリオです。登場するヴィラン組織はザ・カーニバルです。
難易度は中〜高程度と思われます。ご使用、ご改変、動画化はご自由にどうぞ。
2.事前情報
リトライ:2
初期グリット:3
チャレンジ:2
クエリー:3
人数:3人
時間:ボイスセッションで3時間程度
トレーラー(任意):海に浮かぶ巨大な密室の中で何かが起きている。監獄に繋がれたすべての者を人質に、血みどろのパーティーは続く。事は単純だ。キミは火のついた導火線を切ればいい。ヒーローよ、暗黒の絶島を救い上げろ。
3.エントリー
【PC共通】
キミたちはザ・カーニバルの支配人、レディ・マリスと因縁がある。中には過去に捕まえたことがある者もいるかもしれない。現在彼女は行方をくらましている。
そんなある日、キミたちがテレビを見ていると、突如マリスが画面に現れた。
「ハーイ。今ワタシは懐かしのロックウェイブ島に来ているわ。ここでの生活はとっても辛かったの。いつも思っていたわ――脱獄したら看守を皆殺しにして、島ごと海に沈めてやるってね!」
「でも、もう一つ面白いことを思いついちゃったわ。とある三人のヒーローを差し出したら、ここにいる囚人たちは助けてあげてもいいわよ。看守は諦めて貰うけど……」
マリスの無茶苦茶な要求に世界は騒然となる!
4.シナリオの概要
かつてレディ・マリスは悪行の報いとして、ロックウェイブ島に収監されていた。彼女が脱獄したとき一番最初に計画したのは、看守たちへの復讐だ。報復に怯える彼らをいたぶったらひどく楽しいだろうと考えたのだ。
かくしてロックウェイブ島はザ・カーニバルに乗っ取られ、看守は拘束された。マリスにとって他の囚人たちはどうでもいい存在だったので、自分と因縁があるヒーローと交換することを思いつく。ヒーローたちは暗黒の絶島を救えるのか。
5.NPC
・ビビッド・カーレッジ:ジャスティカの元ヒーロー。29歳の既婚男性。真っ赤なマスクを被ってヒーロー活動をしていた。数ヶ月前にレディ・マリスに敗れ、絶望して罪を犯してしまった。現在はロックウェイブ島に収監されている。ヒーロー歴は七年程度。名前と声のみ登場。
6.シナリオ本編
《導入フェイズ》
【イベント:放送】
・登場キャラクター:全員
・場所:任意(テレビがある場所)
状況1
キミたちはザ・カーニバルのレディ・マリスと因縁がある。彼女がロックウェイブ島から脱獄し、行方をくらまして久しい。
そんなある日のこと。キミたちがテレビを見ていると、突然映像が乱れて場面が切り替わった。画面には先ほどまでの番組ではなく、笑顔のマリスが映っている。
「ハーイ、子豚ちゃんたち。今ワタシは懐かしのロックウェイブ島に来ているわ。ここでの生活はとっても辛かったの。いつも思っていたわ――脱獄したら看守を皆殺しにして、島ごと海に沈めてやるってね!」
マリスの背後には巨大な爆弾に縛りつけられた看守たちが見える。看守たちの顔は痛ましく腫れ、血が滲んでいる。
「でも、もう一つ面白いことを思いついちゃったわ。PC1、PC2、PC3!この三人のヒーローを差し出したら、ここにいる囚人たちは助けてあげてもいいわよ。看守は諦めて貰うけど……来たくないならそれでもいいわ。どうせ、ヒーローにとって凶悪な犯罪者の命なんてどうでもいいものね?」
ここでものすごい叫び声が聞こえる。声は殺風景な壁にこだまし、すすり泣きに変わっていく。
「あら、ごめんなさい。猫の声が入っちゃったみたい。そうだ、一人でもPC1たち以外が近づいたらこの爆弾のスイッチを押すわよ。じゃあね!」
カメラが傾いたのか、一瞬マリスの手元が映る。彼女の手は血塗れの拷問器具を弄んでいた。
状況2
マリスに名指しされたキミたちは、ガーディアンズ・シックスから呼び出しを受けた。
エンドチェック
・PCたちがテレビを見た
・PCたちがG6本部に向かった
解説:状況1でPCたちがいる場所は別々でも構わない。ヒーローならば看守を助けようと思うはずだが、マリスはお構いなしである。
《展開フェイズ》
【クエリーイベント1:会議】
・登場キャラクター:全員
・場所:G6本部の会議室
状況1
キミたちはガーディアンズ・シックス本部の会議室にやってきた。そこには誰もおらず、六つある席に一つづつモニターが置いてある。モニターにはそれぞれのオリジンを象ったマークが映されている。
「よく来てくれた、ヒーロー諸君。早速だが我々の結論を言おう」
モニターから声が流れる。すでに会議は始まっていたようだ。
「キミたちがロックウェイブ島に看守を助けに行けば、『ヒーローを差し出した』として犯罪者が解放されてしまうかもしれない。かといって、殺すに任せるわけにもいかない。我々は諸君に判断を一任することにした」
要するに手も足も出ないということらしい。
状況2
「では頼んだぞ、ヒーロー」
モニターからの声を背に、キミたちは会議室を後にした。
エンドチェック
・PCたちが問題を解決する意志を示した
・グリットを1点得た
解説:モニターの向こうにいるのはG6の代表だ。自分たちで結論を出さない、というのが今回の彼らの結論だ。
【クエリーイベント2:落涙】
・登場キャラクター:全員
・場所:G6本部前
状況
ひとまずガーディアンズ・シックス本部から出たキミたちは、見知らぬ女性に声をかけられる。どうやらキミたちを待っていたらしい。髪は乱れ、着の身着のままで家を飛び出したような格好をしている。
「突然申し訳ありません。私はビビッド・カーレッジの妻です。夫はヒーローでしたが、今は囚人としてロックウェイブ島にいます。彼はレディ・マリスとの戦いの後、人が変わったようになって……罪を犯してしまったのです。ですが、私にとって大事な人に変わりありません」
「私もテレビを観ました。あなたがたを差し出す、とは言いません。ですが、夫には死んでほしくない……私はどうしたらいいのでしょう。彼を助けて……」
彼女は言いたいことがまとまらない様子で、泣き崩れてしまった。
エンドチェック
・PCたちが女性と会話した
・グリットを1点得た
解説:PCたちはビビッド・カーレッジを知っていてもいいし、知らなくてもいい。
【チャレンジイベント1:調査】
・登場キャラクター:全員
・場所:任意
状況1
結局のところ、キミたちはロックウェイブ島に向かうしかない。とはいえ闇雲に突入するのは危険だ。まずは島の状況を探りたい。
◯チャレンジ判定:同一のPCが複数の判定を試みてもよい。ただし、同一の技能を使用することはできない。
・判定.ロックウェイブ島の状況を探る …<科学>or<作戦>or<霊能>など 3回
失敗:チャレンジイベント2の判定すべてに-20%の修正。
状況2
キミたちはそれぞれの方法で現在の島の状況を把握した。元から備わっている監視システムが活かされており、海上から行くとあっという間に捕まってしまうだろう。だが、穴はある。海の中は比較的警備が薄いようだ。監視システムが他の場所のものより新しく、カーニバルのメンバーが使いこなせていないのが原因らしい。潜水艦を使って海中から潜り込めるかもしれない。
解説:上記はチャレンジ判定に成功した場合のものだ。潜水艦はG6に頼めば用意してくれるだろう。
【チャレンジイベント2:潜水】
・登場キャラクター:全員
・場所:港
状況1
キミたちが港に向かうと、ガーディアンズ・シックスが用意した小型潜水艦が黒々と海に浮かんでいる。側に職員が立っており、キミたちに挨拶した。彼はキミたちに潜水艦の動かし方を教えるために来たそうだ。職員の説明で、キミたちは艦内の計器や海図を理解していく。
「私は島までついていくことはできません。成功を祈っております」
出港前、彼は帽子を取って深く頭を下げた。
◯チャレンジ判定a:同一のPCが複数の判定を試みてもよい。
・判定1.潜水艦を動かす …<操縦>or<科学-20%>1回 ※「移動適正:水中」があるならば、<運動-20%>で挑戦可能
・判定2.ロックウェイブ島に潜入する …<知覚>or<作戦>or<隠密>1回
状況2
長いこと暗い海中を進んでいくと、正面に緩やかな波消しブロックの傾斜が見えてきた。判定2に成功したPCは、巨大な排水溝から島内に入れることに気がつく。
びしょ濡れのキミたちが管理棟の内部に這い出ると、辺りはひどく血なまぐさく、苦痛の呻きに満ちている。絶え間なく聞こえる絶叫がマリスたちがいる方角を教えてくれる。キミたちは退屈そうにぶらついているカーニバルの怪人をやり過ごしながら、監獄の奥へと進んでいく。
とうとうキミたちはマリスの背後を取ることができた。彼女は右手に鞭、左手にリモコンを持っており、爆弾に縛りつけられた看守に向かって見せびらかしている。
「ほらほら、笑いなさいよ。つまんない顔してるとスイッチを押しちゃうわよ?」
看守は傷だらけの頬を引きつらせて苦しげな笑顔を見せた。
◯チャレンジ判定b
・判定1.マリスからリモコンを奪う …<運動>or<射撃>1回
失敗:決戦フェイズでの戦闘に制限時間が加わる。3ラウンド目の終了時に戦闘が終了していない場合、巨大な爆弾が爆発し、多くの看守や囚人が死亡する。バッドエンドだ。
【クエリーイベント3:齟齬】
・登場キャラクター:全員
・場所:ロックウェイブ島
状況
マリスはキミたちの登場に少なからず狼狽した様子だが、すぐに気を取り直して向き直る。
「あら!来てくれたのね、ヒーロー?そんなに慈愛の心に満ちているなんて、見上げたものだわ!約束通り収容されているヴィランは全員、逃がしてあげてもいいわよ。もちろん、アンタたちには死んでもらうけど」
彼女は駆け寄ってくる部下を制して、余裕たっぷりに言い放った。
エンドチェック
・PCたちがレディ・マリスと会話した
・グリットを1点得た
解説:マリスはあくまでPCたちが囚人を助けに来たと思っている。彼女の中で看守たちの死は決定事項だからだ。
《決戦フェイズ》
【バトルイベント:打倒】
・登場キャラクター:全員
・場所:ロックウェイブ島
状況
「先手を取っていい気になっているのかしら?ワタシたちの計画は少しも狂っていないのよ。アンタたちと看守を殺し、リモコンを取り返せばいいのだから」
マリスの周りに続々と怪人たちが集まってくる。ツインヘッズとザ・プロデューサーの姿もある。
「多勢に無勢という言葉を知っているかしら。今のアンタたちのことよ」
プロデューサーは嫌みったらしくキミたちを指差した。ツインヘッズも二つの口でにやにやと笑っている。
解説1:上記はチャレンジイベント2に成功した場合のものだ。チャレンジイベント2に失敗した場合、マリスはスイッチを押して爆弾を作動させる。メンバーが逃げる時間を計算に入れてあるため、すぐには爆発しない。
解説2:敵はレディ・マリス、ツインヘッズ、ザ・プロデューサー、ヴィランメンバー×3体。
PCはエリア1か2に配置。マリスは4、ツインヘッズとプロデューサーとヴィランメンバーは3に配置する。
戦術
・レディ・マリス(P.193):基本的に《囁き》→《苦痛の鞭》の繰り返しでショックを与え、ライフが0になった時に《断末魔》を使う。
・ツインヘッズ(P.196):《ジャンプ》で移動し、《鷲掴み》で束縛したのちに《ダブル頭突き》を行なう。
・ザ・プロデューサー(P.197):《持ち物検査》で装備を奪う。《代役》を使用するときに同じエリアにPCがいない場合は、パワーの目標をヴィランメンバーに変更する。
・ヴィランメンバー(P.218):射程内のPCを無作為に攻撃する。
《余韻フェイズ》
下記はヒーローが勝利した場合の描写。
キミたちはカーニバルの魔の手からロックウェイブ島を取り戻した。しばらくは怪我人の治療やメディアからの取材に追われる日々が続くだろう。これらに関わるかはキミたち次第だ。
なんにせよ、島を引き上げるキミたちに牢屋の向こうから声がかかる。
「おい。お前たちはヒーローだろ?よかったらビビッド・カーレッジの妻に伝えてくれ。俺は無事だとな」
振り返っても、どの房から発せられた声なのかはわからない。これに関わるか否かも、キミたち次第である。
解説:ビビッド・カーレッジはマスクマンだったが、監獄にいる現在は素顔なので、PCたちに顔を見せない演出にしてある。
以下自由。下記は全員の結末の例。PCは成長点(最大9点)を得る。
全員の結末
復讐は過去から放たれた矢のように、突如耳元を掠める。キミたちがヒーローである限り、逃れることはできない。今回キミたちを襲った矢は、世界を暗黒に塗り替える力さえ持っていた。決死で払いのけたキミたちの勇姿は、後々まで語り継がれることだろう。
「暗黒の絶島」終