シナリオ名《嘲りのハロウィーン》
1.GMさまへ
これは「デッドラインヒーローズRPG」のシナリオです。舞台は10月末の東京都に設定しています。
登場するヴィラン組織はザ・カーニバルです。難易度は低〜中程度と思われます。ご使用、ご改変、動画化はご自由にどうぞ。
2020.03.19…チャレンジイベント2の結果を修正しました。本文の内容に変更はありません。
2.事前情報
リトライ:2
初期グリット:3
チャレンジ:2
クエリー:3
人数:3人
時間:ボイスセッションで3時間程度
トレーラー(任意):嘲りの声が聞こえる。無意味で薄っぺらな虚無の声だ。だからこそ耳について離れない。果たして、悪を成して嘲笑う者に罰を与えることは出来るのだろうか。そこに意味はあるのか。ヒーローよ、暗黒のハロウィーンを打ち破れ。
3.エントリー
【PC1】
キミはたった今、親しいヒーローであるサクラネオンを捕まえた。彼は渋谷の大通りを裸で歩いており、捕まえようとした警官に暴行を加えたのだ。
「見逃してくれ……いや、助けてくれ。家族を人質に取られていて仕方がなくやったんだ」
サクラネオンはキミに哀願する。何やら残酷なことが行われている気配がする。とりあえずキミはサクラネオンに服を貸した。
【PC2】
キミが夕方の道を歩いていると、路地の方から男の声が聞こえた。
「市民会館ってどうやって行くかわかるかなあ?案内してくれたらキャンディをあげるよ」
知りません、と答える幼い声が悲鳴に変わる。子供に危機が迫っている。助けられるのはキミだけだ。
※PC2には家族や友人がいることが望ましい。
【PC3】
キミはかつてザ・カーニバルの支配人、レディ・マリスを監獄島に入れた。噂によると彼女は最近脱獄したらしい。
マリスの行方を追うキミの元に、とんでもないニュースが届いた。
「地に堕ちたヒーロー」――ニュースの中で悪行を働いている人物はどう見てもキミだ。キミにとっては青天の霹靂だが、思い当たる人物が一人いる。マリスがキミに復讐を仕掛けているのだ。
4.シナリオの概要
レディ・マリスは今年のハロウィーンに盛大なパーティーを開き、人々の悲鳴を楽しもうと目論んでいた。しかしその前にPC3によって投獄されてしまう。マリスは見事な執念で脱獄し、計画通りパーティーの準備を始めた。ついでに自分たちを捕まえたヒーローへの復讐を考える。標的はPC3とサクラネオンだ。
10月30日、ザ・カーニバルの面々はハロウィーンの前夜祭と称して、渋谷の交差点で残酷なショーを行う。31日の夜までに彼らを捕まえなければ、今年のハロウィーンは悪夢と化すだろう。ヒーローたちは嘲りに彩られたパーティーを阻止することが出来るのか。
5.NPC
・サクラネオン:サイオンのヒーロー。32歳の既婚男性。テクノマンサーと見紛うような、桜色に発光する管を身体中に持っている。過去にザ・カーニバルの幹部を捕まえたことがある。データはシナリオ内に記載。
6.シナリオ本編
《導入フェイズ》
【イベント1:友人】
・登場キャラクター:PC1
・場所:渋谷の交差点
状況1
ざわめき、好奇の眼差し、押し殺した笑い声。その中にキミは立っている。キミはたった今、親しいヒーローであるサクラネオンを捕まえたところだ。彼は真面目で気さくな男性で、キミとはいい関係を築いている。そんな彼が渋谷の交差点を全裸で闊歩し、捕まえようとした警官に暴行を加えたのだ。
「見逃してくれ……いや、助けてくれ。家族を人質に取られていて仕方がなくやったんだ。俺はもうおしまいだ……」
サクラネオンは絶望した顔で呟き、人々の目から逃れるようにうずくまっている。彼は元は独り身で顔を隠さずにヒーロー活動をしていたが、近年結婚して子供が生まれた事をキミは知っている。
「家族がどこにいるかはわからないが、攫ったのはザ・カーニバルのやつらに違いない。お願いだPC1、俺の家族を助けてくれ!」
状況2
キミがサクラネオンを保護、または逃すなどしたところで、背後で爆煙が上がる。
エンドチェック
・PC1がサクラネオンの置かれた状況を理解した
・PC1が事件の黒幕がザ・カーニバルであることを知った
解説:導入フェイズはすべて10月30日の夕方からの出来事である。
【イベント2:誘拐】
・登場キャラクター:PC2
・場所:通学路
状況1
秋の夕暮れの道をキミは歩いている。どこかからの帰りかもしれないし、パトロールかもしれない。この道は通学路なこともあって、たまに子供が賑やかにすれ違っていく。しばらく歩いて人気がなくなってきた時、路地の方から車のエンジンの音が聞こえた。次いで男の猫撫で声がする。
「市民会館ってどうやって行くかわかるかなあ?案内してくれたらキャンディをあげるよ」
か細い子供の声が知りません、と怯えたように答える。
「へぇー、なんだか怖がってるみたいだねぇ。じゃあ、おじさんが面白いところに連れて行ってやらなくちゃ!アーハハハハ!」
子供が小さく叫ぶのが聞こえた。周囲にはキミ以外誰もいない。
路地に入ると、男が幼い少年を車に押し込もうとしている所だ。男は3本の脚を持ち、ツギハギの顔に歪んだ笑みを浮かべている。どうもただの誘拐犯には見えない。
状況2
キミが男を捕まえる、もしくは追い払うなどすると、男が馬鹿にしたように笑う。
「ひっひっひ、私なんかに構っていていいのかね?今、渋谷では大変な事件が起きているのだよ」
「どんな?それは行ってみればわかるさ。交差点がお勧めだね」
エンドチェック
・PC2が子供を助けた
・PC2が交差点で事件が起きている事を知った
解説:PC2は判定なしで子供を助けることができる。この男はザ・カーニバルのヴィランメンバーだ。もちろん市民会館に用はない。彼らは前夜祭をヒーローに見せつけて、絶望する顔を見たがっている。
【イベント3:因縁】
・登場キャラクター:PC3
・場所:PC3の自宅
状況1
ヒーローにとって情報収集も仕事の一部だ。今日もキミはテレビのニュースをチェックする。
かつてキミが監獄島に入れたレディ・マリスが脱獄してからというもの、不穏な事件が増えている。その中に否が応でも目に飛び込んでくるスクープがあった。
「地に堕ちたヒーロー!? PC3、ヴィランに転向か」
見出しと共に映された姿はどう見てもキミだ。カメラはキミが市民に暴力を振るっている姿をはっきりと捉えている。被害者は数人。その誰もが罪のない老人や子供だ。
もちろん、キミにはそんな卑劣なことをした記憶はない。ただ、思い当たる人物が一人いる。犯行の内容、卑劣な手口、自分への恨み――すべてが物語っている。レディ・マリスがキミに復讐を仕掛けているのだ。
状況2
ニュースが中断されて速報が入る。まさに今、渋谷の交差点でキミの姿をしたヴィランが暴れているらしい。
エンドチェック
・PC3が自分の姿のヴィランが暴れていることを知った
・PC3がレディ・マリスを再び捕らえるために活動を開始した
《展開フェイズ》
【クエリーイベント1:嘲笑】
・登場キャラクター:PC1
・場所:渋谷の交差点
状況
人々は叫びながら逃げ惑っているが、中にはカメラを構えている者もいる。爆煙と破壊された建物の中で、PC3(の姿をしたヴィラン)が嘲笑い、滅茶苦茶にパワーを振るいながら人々を恐怖に陥れている。
「あーっははははは!気持ちいい〜!ずっと目障りだったんだよお前ら!助けて〜だの、頑張れ〜だの。人任せな癖に文句言うしさぁ。」
彼は人々を追い立てては楽しんでいる。
「ヒーローってのは割りを食うよなぁ。なあ、お前もそう思うだろ?ダチだって素っ裸になっちゃって。ぷっ。アハハハ!」
PC3は大笑いしながらキミに話しかけてきた。
エンドチェック
・PC1がPC3の姿のヴィランと会話した
・グリットを1点得た
解説:ヴィランの口調はPC3に合わせて変えるといいだろう。PC1が不審に思うかどうかは、本人の性格やPC3との関係に委ねる。
【クエリーイベント2:嘲弄】
・登場キャラクター:PC2
・場所:路上
状況1
キミは事件が起きている現場に向かっている。次第に逃げる人々とすれ違うようになり、爆音や叫び声が聞こえてくる。そんな時、目の前に奇怪な男が立ち塞がった。カボチャ頭の怪人、トリックドワーフだ。
「やあやあヒーローさん、そんなに急いでどこ行くんだい?」
「へっへっへ、いやね、他人の事に構っている暇があるのかなァと思って」
彼は意味深に口を歪ませる。
「例えばだけど…ま、お遊びの二択だよ。アンタの大事なご両親とご友人、どちらかしか助けられないとしたらどうする?」
「――ああ、選びづらいか。じゃあ親は殺して、っと。……友達とこの先にいる無責任な市民。どちらを助ける?」
彼はニヤニヤとキミの顔色を伺った。
状況2
「へへっ、そう真剣にならなくても。遊びだって言ってるのに」
トリックドワーフは馬鹿丁寧にお辞儀をして、現場への道を明け渡した。
エンドチェック
・PC2がトリックドワーフと会話した
・グリットを1点得た
解説:どう答えてもPC2の両親、友人共に無事である。PC2が気を取られるなら何気ない連絡を入れるとよい。トリックドワーフを捕らえようと試みても構わないが、かなり時間を食って現場に駆けつけるのが遅れると伝えよう。具体的に言えば、次のチャレンジイベントに参加できない。
【クエリーイベント3:嘲罵】
・登場キャラクター:全員(PC3視点)
・場所:渋谷の交差点
状況
速報で見た現場に駆けつけたキミの目の前で、キミそっくりのヒーローが街を破壊している。その場にはPC1とPC2がおり、人々はキミを見て戸惑っている。
「随分遅かったなぁ。待ちくたびれたぜ。」
キミの姿の男は目を細めると、ポケットから取り出したホイッスルを鋭く吹いた。するとどこからともなく軽薄な音楽が流れ、軽業師や軟体人間が列をなして現れた。先頭はもちろんザ・カーニバルの支配人、レディ・マリスだ。
「お久しぶりね、PC3」
「アンタの無駄な行いのせいでハロウィンに間に合わないところだったわ」
「アンタがワタシをムショにぶちこむ。ワタシが脱獄する。その繰り返しじゃない?そーいうのいたちごっこって言うのよ。知ってる?アンタのやってること、ぜーんぶムダってこと!自分の人生ムダにしてて、悲しくないの?」
マリスは言葉尻に怒気を滲ませながらキミに言葉を投げかける。
エンドチェック
・PC3がレディ・マリスと会話した
・グリットを1点得た
解説:レディ・マリスが本心から怒っているのかは不明だ。GMが気まぐれに決めて構わない。
【チャレンジイベント1:家族】
・登場キャラクター:任意(基本的に全員)
・場所:渋谷の交差点
状況1
ライトが灯り始めた交差点の真ん中に巨大なトラックが停まり、瞬く間にカーニバルの特設ステージが作られた。そこには女性が高く逆さ吊りにされ、空いた手で赤ん坊の頭が上になるよう必死で抱えている。赤ん坊はひたすら泣きわめいている。
「ゆうか!かなこ!」
サクラネオンが絶叫し、がむしゃらに駆け寄ろうとする。レディ・マリスは赤ん坊のおむつに顔を近づけ、大げさに鼻を摘むポーズをしてみせた。周囲の怪人たちがどっと笑う。人々はほとんど凍りついたように息を飲んでいるが、中には未だ撮影を続けている者もいる。
「わー、かーわいい赤ちゃん!サクラネオン、会えて嬉しそうにしてるっ!キャハハ、喉が裂けちゃうんじゃない?」
マリスは甘い作り声でそう言うと、女性を擽るようトリックドワーフに指示する。もしも女性が赤ん坊をこの高さから取り落としたら……無事では済まないだろう。
「ほらっ、サクラネオン!そこの雑魚ヒーローどもをやっちゃいなさいよ。奥さんも期待してるぞ〜?」
ステージの上で下品に笑うマリス。キミたちの前には、今やPC3とは似ても似つかない奇怪な外見に変貌したヴィランと、鬼気迫る表情のサクラネオンがいる。
◯チャレンジ判定:同一のPCが複数の判定を試みることはできない。
・判定1.サクラネオンを説得する …<心理>or<交渉>1回
・判定2.ヴィランを倒す …<白兵>or<射撃>or<霊能>1回
・判定3.女性と赤ん坊を救出する …<運動>or<作戦>1回
失敗:女性が赤ん坊を取り落とす。幸い軽症で済むが、サクラネオン一家はカーニバルに連れ去られる。決戦フェイズで「サクラネオン」がエネミーに加わる。
状況2
レディ・マリスを始めとするカーニバルの面々は大ブーイングをする。
「つまんなーい!まあいっか、今日のところは。ハロウィーンの前夜祭として冷やかしに来ただけよ。まだPC3への復讐も終わってないしね?」
「きっと他のヒーローにも楽しんでもらえるわよ。優秀なお子様たちの大・改・造ショーに、ファミリーコロシアム……最後はもちろん花火よね?」
彼女らは爆発のジェスチャーをして退散していく。
「じゃ、明日の夜にどこかで!グッナーァイ!」
解説:上記はチャレンジ判定に成功した場合のものだ。PCたちがカーニバルの後を追っても、どこかのタイミングで巨大なトラックは忽然と消えてしまう。ちなみにトンネルを利用したトリックだ。ここで一息ついて、ヒーロー同士で情報交換などをするといいだろう。
【チャレンジイベント2:潜入】
・登場キャラクター:全員
・場所:街外れ
状況
ハロウィーン当日。昨夜の喧騒とは打って変わって、街の交差点は人通りが少ない。警察も厳戒態勢を敷いている。嵐の前の静けさといったところだ。
もし今夜レディ・マリスが言っていたような事件が起きるならば、後々まで語り継がれる最悪の日になるだろう。ガーディアンズ・シックスも協力してくれているが、残念ながらカーニバルと全面衝突できるほどの余裕はない。何とか限られた人員で敵の意表を突かねば――。
街中を駆け回るうちに、とある個人の地下駐車場に数十台の怪しげなトラックが停まっているという情報を得た。昨夜のカーニバルの逃走方向からして、奴らに間違いなさそうだ。
地下駐車場前は大通りを避けた人々が行き交っている。敵を制圧するには少々厄介だ。PC3に気づいた市民の一人が声を上げる。連鎖するように次々とどよめきが上がる。まだPC3への誤解は解けきっていないのだ。
◯チャレンジ判定:同一のPCが複数の判定を試みてもよい。
・判定1.市民の疑いを晴らす …<心理>or<交渉>1回
・判定2.G6に適切な指示をする …<知覚>or<作戦>1回
・判定3.敵に気付かれずに侵入する …<作戦>or<隠密>1回
失敗:多くの幹部やメンバーを取り逃がし、決戦フェイズで[支援]が使用できなくなる。
《決戦フェイズ》
【バトルイベント:阻止】
・登場キャラクター:全員
・場所:地下駐車場
状況
地下駐車場内に忍び込んだキミたちは、一つずつトラックを確認していく。中には確かにカーニバルのメンバーが寝ており、ガーディアンズ・シックスによって静かに制圧されていく。
とうとうキミたちはレディ・マリスのいるトラックを見つけた。彼女も今夜に備えてぐっすり眠っていたようだが、キミたちを見ると弾けるように目を覚ます。
「あら、わざわざ来てくれたの?今夜まで待てないなんて……よっぽど痛い目見たいらしいわね!!」
彼女は高笑いしてから、残っている部下を呼び寄せた。
解説1:上記はチャレンジ判定に成功した場合のものだ。チャレンジイベント1に成功していたならば、サクラネオンがガーディアンズ・シックスと共に活躍していてもよい。
解説2:敵はレディ・マリス、トリックドワーフ、ヴィランメンバー×4体。チャレンジイベント1の結果によってサクラネオンが加わった場合、ヴィランメンバーを1体減らすこと。
PCはエリア1か2に配置。マリスとドワーフは4、ヴィランメンバーとサクラネオンは3に配置する。
戦術
・レディ・マリス(P.193):積極的にPC3を狙うが、PC全員に殺意を抱いている。内心追い詰められており、遊ぶような動きはしない。基本的に《囁き》→《苦痛の鞭》の繰り返しでショックを与え、ライフが0になった時に《断末魔》を使う。
・トリックドワーフ(P.196):《カボチャガス》を使用した後は《カボチャ爆弾》を打ち続ける。
・ヴィランメンバー(P.218):射程内のPCを無作為に攻撃する。
・サクラネオン(P.112-117改変):マリスの趣味で主にPC1を狙うように命令される。《突撃-》で移動し、《ボーンエッジ-》で攻撃する。洗脳はされておらず、あくまでヒーローのままだが、臨死状態にはならない。マリスとドワーフが戦闘不能になれば攻撃をやめる。
■サクラネオン(サイオン)
ライフ:20 サニティ:16 クレジット:12
肉体:38 白兵58% 運動48% 生存48%
精神:22
環境:20
移動適正:地上
・ボーンエッジ-
属性:攻撃 判定:白兵+20 (78%)
タイミング:行動 射程:0
目標:1体 代償:ターン6
効果:1d6点のダメージを目標に与える。
*友人を思いきり殴ることなどできない。
・突撃-
属性:移動 判定:-
タイミング:行動 射程:-
目標:自身 代償:ターン3
効果:敵が1体以上存在する隣接エリアへと移動する。
*思わず足が鈍る。
・硬質化-
属性:強化 判定:生存+20 (68%)
タイミング:特殊 射程:-
目標:自身 代償:なし
効果:自身が2点以上のダメージを受けた場合に使用可。受けるダメージを1/2(端数切捨)にする。1イベントにつき1回のみ使用可。
*どうしたらいいかわからない。
《余韻フェイズ》
自由。下記はPCが勝利した場合の例。PCは成長点(最大9点)を得る。
PC1の結末
事件が片付いて落ち着いた頃、キミはサクラネオンに呼び出された。彼は世間の好奇の目に負けずにヒーローを続けている。
「改めてお礼を言うよ。この間は本当にありがとう。俺と家族の恩人だよ。……ヒーローって割りを食うけどさ、その分やりがいがあるよな。俺は自分の手で家族を守れるよう、もっともっと強くなるよ。お前みたいに」
彼は照れくさそうに笑った。ヒーローを続ける限り、キミもいつ残酷な目に遭うかわからない。それでもなおキミはヒーローを続けるだろう。キミの努力が無駄でないことを、目の前の笑顔が証明している。
PC2の結末
「あの……!この間、うちの子を助けてくれたヒーローさんですよね」
キミがあの通学路を歩いていると、若い女性が声をかけてきた。彼女の側にはこの間助けた少年がいる。
「やっぱりここにいた!会えると思って待ってたんだ。ヒーロー、あの時はありがとう!」
少年は小さな包みを渡してくる。開けてみれば、中身は手作りのクッキーだ。拙いながらPC2の姿を模してある。
「うふふ。この子、将来お菓子屋さんになりたいらしいんです。……助けて下さって、どうもありがとうございました」
女性は少年と共に頭を下げた。彼ら市民の中には無責任な者もいるかもしれないし、そうでない者もいるかもしれない。確実に言えることは、今キミを見つめる目は感謝と憧れに満ちている。
PC3の結末
レディ・マリスを再び捕まえたキミは、気が向いたのかはたまた仕事でか、留置所に面会に行った。
「はぁーあ、またムショ暮らしって訳ね。しょーがないからしばらくはのんびりしてやるわよ」
マリスはだらしない姿勢で椅子を揺らしており、ちっとも反省した様子がない。
「見ていらっしゃい。今度出てきた時こそ、アンタをぎったんぎったんにしてやるんだから!」
息巻くマリスを相手にせず、キミは留置所を後にした。メディアの盛んな報道により、キミへの誤解はすっかり解けている。キミはこれからも悪人を捕まえ、街につかの間の平和をもたらすだろう。活気が戻った街の中を、キミは歩いていく。
全員の結末
何事もなくハロウィーンの夜が過ぎて11月になった。木枯らしが吹き荒み、人々は身を縮めて歩く。今日もどこかで誰かが誰かを嘲っている。だが何ということはない、ただの日常的なやりとりだ。そこに安らぎさえ宿っているのは、キミたちのお陰……かもしれない。
「嘲りのハロウィーン」終