シナリオ名《虚像の三文芝居》


1.GMさまへ

これは「デッドラインヒーローズRPG」のシナリオです。登場するヴィラン組織は劇団 妖精の尾です。

難易度は中程度と思われます。ご使用、ご改変、動画化はご自由にどうぞ。



2.事前情報

リトライ:2

初期グリット:3

チャレンジ:2

クエリー:3

人数:3人

時間:ボイスセッションで3時間程度

トレーラー(任意):開演のブザーが鳴る。静まり返る劇場に満ちるのは悪意か、期待か。おそらくその両方なのだろう。観客は望んでいる。欲望が満たされることを。観客は望んでいる。悪意も期待も裏切られ、すべてが覆されることを。ヒーローよ、虚像の三文芝居を打ち壊せ。



3.エントリー

【PC1】

 キミには若い女性の友人、または家族や恋人がいる。キミがその女性と外食を楽しんでいる時、彼女は化粧直しに席を立った。

 キミは長い間待たされるが、いつになっても彼女は帰ってこない。現場に行ってみると彼女は忽然と消えていた。



【PC2】

 キミはヴィラン組織「劇団 妖精の尾」に仲間の命を奪われたことがある。ある時キミはインターネットの掲示板で、妖精の尾が大きな公演を予定しているという噂を目にした。

 妖精の尾が公演を行う時には、必ず多くの人命が失われる。キミは惨劇を阻止するために動き出した。



【PC3】

 キミが駅前を歩いていると、二人の役者がパントマイムを披露している。二人の演ずる愛憎劇はクライマックスを迎え、倒れ込む姿に拍手が沸き起こる。

 しかし次第に歓声はどよめきに変わる。キミが調べてみると、彼らは実際に息絶えていた。



4.シナリオの概要

 創立70周年の記念事業として、大きな公演を予定している「劇団 妖精の尾」。彼らの描く悲劇に必要なものは、多くの犠牲者とドラマチックな死を迎える主人公だ。妖精の尾は犠牲者役として若い女性を鏡の中に集めだした。同時に、あえて証拠を残すことで優秀なヒーローだけをおびき寄せようとも考えている。彼らの罠に気付こうと気付くまいと、主人公役たるヒーローたちは舞台に上がらねばならない。ヒーローたちは鏡の世界の三文芝居に幕を降ろせるのか。



5.シナリオ本編

《導入フェイズ》

【イベント1:失踪】

・登場キャラクター:PC1

・場所:料理店



状況1

 キミは今、親しい女性と外食をしているところだ。人気の店だけあって周囲は賑わい、平和そのものである。キミは戦いに疲れた心をしばし休める。

「久しぶりだよね。PC1と食事するの」

 彼女はそんなことを言いながら料理に舌鼓を打っている。

 美味しい食事を堪能した後、キミの友人は化粧直しに席を立った。ちらりとキミの胸に不安が過ぎる。最近、若い女性が密室で消失する事件が起きているのだ。女性たちは未だ発見されていない。しかしついていく訳にもいかず、キミは待つ。10分。20分。30分が過ぎた。それでも友人は帰ってこない。

 いよいよ心配になったキミが様子を見にいくと、そこには誰もいなかった。密室の中に彼女のポーチだけが投げ出されている。



状況2

 奇妙なことに、ポーチの一部が鏡にめり込んでいることに気がついた。引っ張れば外れるが、鏡自体もポーチの形に凹んでいる。異常な事態を受けてキミはガーディアンズ・シックスに連絡をとった。



エンドチェック

・PC1が友人を設定した

・PC1が友人の失踪を確認した

解説:食事の相手は若い女性であれば恋人でも家族でも構わない。彼女は妖精の尾によって鏡の中に引きずり込まれてしまったのだ。PC1が壊さない限り、扉は内側から鍵がかかっている。



【イベント2:傷跡】

・登場キャラクター:PC2

・場所:PC2の自宅



状況1

 開演のブザーが鳴る。幕が左右に割れるにしたがって、キミの心も引き裂かれる。ぐったりと舞台の上に倒れているのは、キミがよく見知った人物だ。どこからか女の高笑いと不吉な羽の音が聞こえる。キミは冷や汗をかきながら夢から覚めた。

 キミは過去に「劇団 妖精の尾」にヒーロー仲間の命を奪われた。その苦しみは今もなお胸を焼いている。そんなある日、キミは妖精の尾が大きな公演を予定しているという噂を目にした。出どころはインターネットの掲示板であり、大してあてにならない。だが、中には気になることを書き込んでいる者もいる。

「妖精の尾はもうすぐ創立70周年らしいから……何らかの動きはあるんじゃないかな?

 彼らが公演を行う時には、必ず多くの人命が失われる。なんとしてでも阻止しなければならない。



状況2

 妖精の尾の幹部、継母が現在勾留されているらしい。キミは情報を得るために留置所へ向かうことにした。



エンドチェック

・PC2が妖精の尾の公演を知った

・PC2が留置所に向かった

解説:掲示板の書き込みから詳細な情報を得ることはできない。ガセネタも多分に混ざっている。



【イベント3:惨劇】

・登場キャラクター:PC3

・場所:駅前



状況1

 キミは何らかの理由で駅前を歩いている。忙しない人波に揉まれていると、何やら人だかりが出来ていることに気が付いた。輪の中心では二人の男女がパントマイムを披露している。どうやら愛憎劇らしく、冷たくあしらう女に男が縋っている。かっとなった男が短剣を持つそぶりをし、女を刺した。女はもがきながら倒れ、男も嘆きの末に自害する。

 見事な演技に見物人から拍手が沸き起こる。しかし次第に歓声はどよめきに変わる。男女がいつまで経っても起きないのだ。異変を感じたキミが近づいてみると、二人はすでに事切れていた。現場に凶器や死因となるものは見当たらない。



状況2

 ガーディアンズ・シックスの到着を待ちながら、キミは現場に積んであるチラシを手にとった。「妖精の尾 70周年記念公演」と銘打たれており、幹部のオディールが主役のようだ。肝心の日時や場所は書かれていない。



エンドチェック

・PC3が惨劇を目の当たりにした

・PC3がチラシの内容を確認した

解説:男女は妖精の尾の劇団員だ。彼らがどうやって死んだのかは全くの謎である。



《展開フェイズ》

【クエリーイベント1:取引】

・登場キャラクター:PC1

・場所:留置所



状況1

 ガーディアンズ・シックスからの助言で、キミは留置所にいる継母に会いに来た。継母は鏡にまつわる魔法に詳しいからだ。単純な発想だが、それ以外にとっかかりがないのも事実だ。

 対面窓の向こうの扉が開き、装飾品や飾り紐が取り払われたみすぼらしい姿の継母が現れた。

「単刀直入に言いましょう。私を解放なさい。そうすれば知恵を授けましょう」

 椅子に腰掛けるなり彼女は切り出した。

「事件のことは伝え聞いています。女たちはまだ生きている。好色な獣の舌舐めずりに震えながら、助けが来るのを待っています」

「お前が私を解放する権限を持っていないことは承知しています。ですが、腕力や霊力なら――どうでしょう?」

 彼女は超然とした態度で言う。口元には毒のような微笑を浮かべている。

解説1:継母を解放するには力に訴えるしかない。彼女は自身の身柄など実はどうでもよく、PC1を悪の道に引き入れたいのだ。この時点でG6等にかけあっても、「現在審議中である」との答えが返ってくるだけだ。ちなみに継母の言う「好色な獣」とは幹部の青髭公のことである。



状況2

 キミが取引に応じようと応じまいと、面会室に留置所の職員が入ってくる。

「継母は超法規的措置によって釈放されました。妖精の尾は失踪事件への関与を公に認め、女性たちを解放する代わりに継母の釈放を求めてきたのです」

 職員の言葉を聞くと、継母はつと立ち上がって面会室から出ていく。



エンドチェック

・PC1が継母と会話した

・グリットを1点得た

解説2:継母が捕まったのはわざとである。彼女はヒーローを罠に誘うためにクローディアスによって配置された駒だ。もちろん妖精の尾に女性たちを解放する気はない。PC1が取引に応じて対面窓を破壊するなどしても、駆けつけた職員は継母がやったものと思い込む。継母もそれを否定せず、PC1に恩を売ったような顔で楽しんでいる。



【クエリーイベント2:詭弁】

・登場キャラクター:PC2

・場所:留置所前



状況1

 留置所の前までやって来たキミは、大手を振って建物から出てくる継母を目にする。彼女はキミに気づくと不敵に話しかけてくる。

「出遅れたようですね、PC2。私に用があったのでしょう?私はたった今釈放されました。お前に付き合う義理はないということです」

「私が憎いですか。PC2。お前の仲間は黒鳥オディールの手にかかりました。私はただ葡萄酒の肴にしただけ……」

 継母を釈放したのはガーディアンズ・シックスだそうだ。キミはこのまま彼女を行かせるだろうか?



状況2

 キミは留置所から出てきたPC1と鉢合わせた。



エンドチェック

・PC2が継母と会話した

・PC2がPC1と合流した

・グリットを1点得た

解説:公演について質問しても継母から具体的な答えは返ってこない。合流したPC1が取引のことを持ち出しても、「私を解放したのはG6であってお前ではない」などと言って取り合おうとしない。



【クエリーイベント3:至上】

・登場キャラクター:PC3

・場所:駅前



状況1

 血なまぐさい事件が起こってもなお、現場に積んであるチラシをそそくさと取っていく男性がいる。キミが呼び止めて話を聞くと、彼は気まずそうな顔をした。

「チラシにファンだけが解ける暗号が隠されているらしいんだ。それが劇場への行き方になっているんだよ。解くのが面白そうだから取っただけで、実際に行ったことはないよ」

「正直、可能なら行ってみたいな。ヴィランなんて言われているけど、やり方が現代に合わないだけで……。芸術のためなら多少のことは仕方ないさ。歴史に残るものは数多くの犠牲を出してきただろう?」

 男性は夢見るような表情でキミに語りかける。



状況2

 ガーディアンズ・シックスの職員が遺体を引き取りに来る。キミの話を聞くと「たった今継母が釈放されたところなので、可能なら留置所に向かって尋問してほしい」と頼まれる。



エンドチェック

・PC3が男性と会話した

・PC3が留置所に向かった

・グリットを1点得た

解説:この男性は妖精の尾のファンだ。ただの一般人だが、「実際に行ったことはない」という言葉が本当かはわからない。



【チャレンジイベント1:博打】

・登場キャラクター:全員

・場所:留置所前



状況1

 留置所の前にPC3が駆けつけた。継母はキミたちに構わず、空中に出現させた靄の中に入っていこうとする。すると、どこからともなく幹部のメフィストフェーレスが顔を出した。

「野次馬め。何をしに来たのです」

 継母の問いにメフィストは肩をすくめる。

「いやはや、どうもいけない。そこなヒーロー様がたもおわかりでしょうが、我々は娘らを解放する気などさらさらありません。ですが、それでは私めは困るのです。私は悪魔。悪魔は契約を大事にしますからな」

「何ということを。反逆ですか、メフィスト」

 と継母。

「そのつもりはありませんよ、レディ。ただ、悪魔にも規律があるのです。どうです、ヒーローの皆様。私と賭けをしませんか。あなたがたが勝ったら娘らの居場所をお教えしましょう」

 メフィストはコインを空高く弾いた。

「さあ、表か裏か?」



◯チャレンジ判定:同一のPCが複数の判定を試みてもよい。

・判定1.メフィストとの賭けに勝つ …<心理>or<知覚>1回

 判定に成功すると、メフィストはどちらに賭けても勝たせるつもりがないとわかる。それを口にすればメフィストは降参する。

「お見事。今回の公演は鏡の世界で行われます。娘らもそこにいますよ――エキストラとして使われるのでね。入るにはそれ、チラシの裏側をご覧なさい。左下の方です」

 メフィストは暗号が記された場所を指した。

・判定2.チラシの暗号を解く …<知覚>or<作戦>1回

 判定に成功したPCは明晰な頭脳で暗号を解読する。鏡の前でとある呪文を逆さまに唱えれば、鏡の世界に入れるようだ。

・判定3.記憶を手繰る …<追憶>1回 ※PC2のみ挑戦可能

 今は亡き仲間のヒーローが妖精の尾について言っていた言葉を思い出す。「奴らは光を嫌う。何故なら光に見放されているからだ」



失敗:時間をかけてなんとか鏡の世界に入ることが出来るが、鏡の中で迷って更に時間がかかる。チャレンジイベント2の判定すべてに-20%の修正。



状況2

 賭けが終わると継母とメフィストは消えてしまった。

 キミたちは手順通り鏡の世界に入り、温度のない仄暗い道を歩いていく。分かれ道に差し掛かると光の玉が浮いており、キミたちを案内するように動く。PC2が思い出した言葉を元に、光の誘導と逆方向に進むと、一つの扉の前にたどり着いた。

解説:上記はチャレンジ判定に成功した場合の描写だ。メフィストは記念公演にふさわしいヒーローを選別する役回りである。もしヒーローたちがイカサマを見抜けないようであれば、主人公役にふさわしくないと考えている。



【チャレンジイベント2:救出】

・登場キャラクター:全員

・場所:鏡の世界



状況1

 扉を開けると異様な光景が広がっていた。若い女性たちが展示されるように捕まっており、キミたちにはわからない基準で仕分けされている。さらに、女性たちは偏執的なまでに身ぎれいにされている。まるで箱に入れられた人形のようだ。

 部屋の隅にはよく研がれた斧や手術道具、血を拭った布などが放置されている。PC1の友人もここにいる。幸い無事だが、酷く怯えて衰弱している。

「何か食べ物を持っていない……?体内を綺麗にするんだと言われて……ずっと食べていないの」

 PC1の友人が掠れた声で言った。他の女性たちは何を聞かれても黙りこくっているか、泣き出してしまう。

「まったく、青髭公も考えすぎだよな。ヒーローが入り込んでいるなんて」

 扉の外から声がして、劇団員たちが部屋に入ってきた。キミたちを見ると驚いた顔をして襲いかかってくる。



◯チャレンジ判定:同一のPCが複数の判定を試みることはできない。

・判定1.劇団員を倒す …<白兵>or<射撃>or<霊能>1回

・判定2.女性たちに応急手当てを施す …<生存>1回

・判定3.女性たちを鏡の世界の出口まで運ぶ …<操縦>or<運動>1回

失敗:決戦フェイズでグリットが使用できない。



状況2

 女性たちは一人ずつ鏡の外に出ていくが、キミたちにはまだやる事がある。公演を止めるため、鏡の内部を探らねばならない。

 PC1の友人が別れ際に言う。

「座長と呼ばれる男は言っていた。きっとヒーローがやって来ると……気をつけて。罠かもしれない」

解説:上記はチャレンジ判定に成功した場合の描写だ。状況1で登場するのは青髭の部屋である。女性たちは公演の被害者役として選ばれており、青髭の気に入った者は人体改造されかけていた。また酷く尊厳を踏みにじるようなこともされているが、ここに詳細を書くことはできない。



《決戦フェイズ》

【バトルイベント:開幕】

・登場キャラクター:全員

・場所:本文参照



状況

 ふいに周囲の風景が砕け散り、キミたちの耳を喝采がつんざく。キミたちが立っているのは劇場の舞台の上で、薄暗い客席には正装の男女が目を輝かせているのがわかる。

 悠々と前に進み出た座長のクローディアスが口上を述べる。

「ここに現れたのはわが賓客。この方らはいかなる困難にも身の程を弁えず立ち向かう、まさに勇者と聞く。お歴々にはおわかりであろうが、主人公の条件は多少の善良さと愚かさだ。この方らも見事活躍し、立派な死で舞台を彩るだろう」

 華麗な跳躍と共にオディールが現れる。腕の代わりに黒い鳥の翼を持ったバレリーナだ。その側にメフィストと青髭も立つ。今こそ、胸糞の悪い芝居を打ち壊す時だ。



解説敵はメフィストフェーレス、オディール、青髭公、劇団員×4体。

今回のみオディールのエナジーを「ライフ:50 サニティ:30 クレジット:30」とする。また、成長用パワー「芸達者」を取得する。

PCはエリア1か2に配置。メフィストは4、青髭とオディールと劇団員は3に配置する。劇団員のパワーは基本的に「殺陣」のみを選択する。



戦術

・メフィスト:まず《気まぐれな賭け》を使用し、状況を判断して飛行状態や隠密状態になる。PCが射程内に入ったら《三本目の脚》を使用する。任意のタイミングで《テーブルワイン》を使用する。

・青髭:まず《開けるな!》でPCのターンを遅らせる。《血塗れの鍵》で妨害した後、《嫉妬の斧》を使用する。

・オディール:《グラン・フェッテ》と《誘惑》で攻撃する。PCが射程外にいたり、射程0のパワーで続けて攻撃されたりすると《グラン・ジュテ》で移動する。

・劇団員:エリア2に移動して《殺陣》を使用するか、エリア3に留まって基本攻撃をする。



《余韻フェイズ》

下記はヒーローが勝利した場合の描写。



「殺しなさい。観客はそれを望んでいる。幕を降ろすには悪役の死がうってつけ。あいにくと、悲劇には至らなかったけれど」

 オディールが悔しげに言い放つ。観客はキミたちの勝利を見てあたふたと帰り支度をしている。クローディアスはいつの間にか姿を消しているが、キミたちが鏡の世界を隈なく探せば、隠し通路を歩いているところを捕獲できる。



以下自由。下記は全員の結末の例。PCは成長点(最大9点)を得る。



全員の結末

 幕は降りた。終わったばかりの出来事に想いを馳せるのもいいだろう。忙しなく語らうのもいいだろう。キミたちはその時間を手にしたのだ。そしてもう一つ、得たものがある。街角で、学校で、お茶の間で――たくさんの人々の喝采が、キミたちに贈られている。

「虚像の三文芝居」閉幕



←戻 作者:うえ/(@ORC_ue)

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