シナリオ名《題名 -無題-》


1.KPさまへ

これは「クトゥルフ神話TRPG」のロスト探索者用シナリオです。復活はありません。

舞台は夢の中の絵本の世界です。現代日本を想定していますが、探索者全員の生きていた時代が一致していれば改変可能です。

夢見技能を使用しているので、KPが「ラヴクラフトの幻夢境」を所持している必要があります。

生存探索者用にすることもできますので、ページの最後に改変用の資料が付記してあります。ロスト探索者と生存探索者が一緒に探索することは出来ません。

ご使用、改変、動画化はご自由にどうぞ。太字の部分が基本的に読み上げる、またはテキストで貼る部分です。



2.事前情報

舞台:現代日本

形式:特殊クローズド(ドリームランドのルールを適用)

必須事項:生存中の大事な人がいるロスト探索者

推奨技能:なし

使える技能:絵画系の芸術技能、目星

推奨人数:2〜3人程度

時間:ボイスセッションで2〜3時間程度

備考:肉体/昏睡/永久のいずれかのロスト探索者がプレイ可能です。特殊ロストは状況に応じて判断して下さい。



3.シナリオの概要

死んだはずの探索者たちは水彩画の世界で目が覚める。一つ一つの世界に地面がめくれているような部分があり、それをめくると次の世界に移動する。夢見技能を使ったり、久しぶりの食事をしたりして探索者たちは楽しむことだろう。

最後の世界は今までと打って変わって現実感のある少年の部屋で、少年の目の前に題名のない本がある。探索者たちがその本を見てみると、自分たちが通ってきた世界そのままだった。探索者たちの冒険は少年が描いた絵本の世界で行われていたのだ。

少年の描いた本には登場人物やストーリーがまだ存在しない。探索者たちの冒険譚を聞くうちに、少年は「探索者たちを絵本の主人公にしたい。絵本が出来上がったら一番に読んでほしい」と切り出す。しかし探索者たちはすでに死んでいるため、家族や友人の元に絵本を届けてほしいと望むだろう。

このすべての冒険とやりとりは、すでに亡き探索者たちの大事な人が見た夢、そして少年が見た夢だった。目が覚めた探索者の友人や家族は、様々な想いを抱えて日常を過ごす。ある日彼らの元に夢で見たのと同じ絵本が届く。その題名は、亡き家族や友人の名前で飾られていた。



4.背景

NPCである古谷春記は小さい頃から病気がちで長く臥せっていた。そのため想像力が豊かになり、自分でも気づかないうちに夢見る人となっていた。

ある時彼は孤独な時間の慰めに絵本を作り始めた。しかし友人がいないため登場人物が思いつかず、ストーリーもどこかで読んだようなものにしかならない。春記が絵本のことを考えながら眠るうちに、ドリームランドに彼の絵本の世界が生まれ、勝手に動物や人魚が住み着くようになった。

一方大事な人を失った人間たちは、亡き家族や友人や恋人の夢を見る。彼らの夢と春記の夢、そしてドリームランドが混ざった曖昧な空間が、当シナリオの舞台となる。



5.NPC

・古谷 春記(ふるや はるき):17歳。病気で休学している学生。自覚のない夢見る人。

STR:6 CON:4 POW:15 DEX:9 APP:14 SIZ:10 INT:18 EDU:11

夢見:50% 芸術(水彩画):75%



6.シナリオ本編

《導入/夢見技能について》

あなたたちがふと気がつくと、大きな湖が広がる岸辺に立っていました。すべては水彩絵の具で描いたような風景です。

あなたたちがここに来た途端、昔から知っていたようにある知識を思いつきます。

『夢見技能はドリームランドでの現実を修正するために使われる。何を作るか選び、技能を使う。

夢見技能の初期値はPOW。技能を使うためにはMPを消費しなければならない。どれだけのMPがかかるかは作るものによる。

必要なMPを消費する時にPOWを一緒に消費することによって持ちポイントの限界に打ち勝つことができる。消費するPOW1ポイントごとに限界が2倍になる。

例:夢見技能値10%+POW3消費=創造できる限界値が80P。

※POWを付与しても夢見技能の初期値は変わらない。』

「ラヴクラフトの幻夢境」P12-13参照

KPへ:ここは完全なドリームランドではありません。また夢見技能の初期値を通す事は難しいので、出目の値や後に出てくるAFの使い方を見て成功した扱いにしてもいいと思います。作るものによってどれだけのMPがかかるかは、幻夢境を参照してその都度KPが設定して下さい。またPLが夢見技能を把握できない場合は、やってみた方がわかりやすいのでとりあえず進めるのがいいでしょう。

探索者は自分が死んだことを覚えているか、なんとなく気づくことができます。



《1ページ目》

ここは大きな湖が広がる岸辺です。すべては水彩絵の具で描いたような風景です。

岸の淵、水底はたくさんの透明な水晶と青い水晶とでできています。遠くに向こう岸が見えますが、湖の周りを歩いていくのは随分骨が折れそうです。

湖の周囲は舞台の書き割りのようになっていて、木々と空が描かれています。

※水彩画を3Dアニメにしたようなイメージ。書き割りを破るなどして木々の向こう側に行くことはできない。ここにある全ての物の質感は紙ではなく、水なら水の手触りがある。



・透明な水晶を触る→心に力が溢れるような感覚を覚えます。(1個使うごとにPOW1が付与される)

・青い水晶を触る→不思議な力が助けてくれるような感覚を覚えます。(1個使うごとにMP1が付与される)

KPへ:探索者は湖を渡って行かなければなりません。《水泳》成功でも渡ることができます。夢見技能を使うなら、本物のドリームランドではあり得ない近代的な機械なども作ることができていいと思います。橋をかける、船を作るなどすれば向こう岸へ渡れるでしょう。湖を進んでいく間、ぺらぺらした紙の魚が連なって案内してくれます。

水晶は無限に転がっているので、探索者に持っていくか聞いた方がいいでしょう。2ページ目からの世界にこのAFは出てきません。



向こう岸に着いて辺りをよく見る、もしくは《目星》地面そのものがめくれているような不思議な場所を見つけます。

※向こう岸も目覚めた場所と同じ作りになっていて、地面をめくらない限り次の世界に進むことができない。



《2ページ目》

あなたたちが地面をめくると、いつのまにか森の中の一本道に立っていました。先ほどと同じようにすべては水彩画のような景色です。木々や草むらは飛び出す絵本のように平面的に重なっています。

※飛び出す絵本と紙人形劇を混ぜたイメージ。木々を縫って森の中に入っても、書き割りの背景に辿り着くだけでどこにも繋がっていない。一本道のどちら側に進んでいっても処理は同じ。



木をよく見る、もしくは《目星》成功:紙の動物が木の影や草葉の影に見つかります。小鳥、りす、うさぎなどです。

草むらをかき分ける、もしくは《目星》成功:紙の虫が見つかります。蝶、ばった、蜘蛛などです。



→道を進む

あなたたちがしばらく道を歩いていくと、道端に小さい家があります。赤い三角屋根で入り口と煙突があり、窓が開いています。中を覗いてみれば木の丸テーブルの上にごちそうが載っています。七面鳥の丸焼き、添え付けのグリーンピース、にんじんのスープなどです。他には椅子と暖炉があり、中には誰もいないようです。

KPへ:食事も絵が立体化したような見た目ですが、それぞれの食感と味がありとても美味しいです。食べなくても問題はありません。また、食べても尽きることがありません。

家の中の作りは絵本に出てくるような生活感のないもので、どうやって暮らしているのか見当がつきません。家を通り過ぎると2ページ目で最初に立っていた場所に戻ります。

家の左側の地面をよく見る、もしくは《目星》成功:先ほど見つけたのと同じ、地面がめくれている場所があります。



《3ページ目》

あなたたちが地面をめくると、次は海辺にいました。透き通ったトルコ石色の水彩画の海です。

海は遠浅になっていてどこまでもいけそうです。砂浜には綺麗な貝がいくつも落ちています。



→海の中を歩いていく

あなたたちが海の中を歩いて行くと紙の珊瑚礁があり、タツノオトシゴや熱帯魚のような鮮やかな魚がいます。

→砂浜を歩いていく

あなたたちが砂浜を歩いていくと、砂がきしりきしりと鳴きます。海風が心地よくあなたたちの髪を揺らします。



しばらく歩くと人魚が岩の上で悲しげに歌っています。隣にはもう一つ岩がありますが、そこには何もありません。彼女は人間と話すことができない様子で、あなたたちを見ると身振り手振りで「寂しい、仲間が欲しい」と伝えてきます。

KPへ:ここで探索者に《夢見》で人魚の仲間を作ってもらうといいでしょう。生き物を作る場合の価値はそれに相当する無生物の2倍になるので注意してください。人魚を作らなくても次のページに行けますが、あえて作った後に下記のめくれている部分を教えてもいいかもしれません。



→人魚の仲間を作る

人魚は喜んで楽しげに歌で会話し始めます。そしてあなたたちにお礼を言うように頭を下げました。新しく作られたほうの人魚があなたたちに岩の下を指し示しています。そこの海(砂浜)が不思議な具合でめくれています。



《4ページ目》

あなたたちが水面(砂浜)をめくると、次は真っ白な世界にいました。ぽつんと大きな窓枠が浮いており、その前にイーゼルにかけられたベニヤ板があります。ベニヤ板は水張りされており、何も描かれていません。

《芸術(絵画)》に成功すれば水張りされた紙が水彩紙だとわかる。



→窓枠を覗く

あなたが窓枠を覗くと、窓枠を覗いているあなたが見えます。窓枠の中の窓枠には、また同じ様子が鏡写しのように永遠に続いています。

《夢見》で画材を出して《芸術(絵画)》などで水張り板に絵を描く

(芸術技能の成否に関わらず) 白い世界に描いた絵と同じ物が現れます。



KPへ:ここは白紙のページです。イーゼルは春記が窓の外を見ながら絵を描く時に使っている物です。窓の中の風景は春記が絵を描く時に自分自身を覗いているような心象の現れで、中に入っていっても向こう側の白い空間に出るだけです。

現れた物によって空間認識ができるようになり、左端の床がめくれていることに気づけます。また水張り板に扉を描いて白い世界に扉を生み出し、それを開けて進むことで次の世界に移っても構いません。真っ白な床に何かを描いても立体化することはありません。

水張り板に穴を開けると白い世界に真っ黒な穴が開きます。探索者がそこに入っていった場合、この夢の世界から退場することになります。すでにロストしているのでそれ以上の何かは起こりません。

探索者がページをめくるか、生み出した扉などを開けて進んだ際に次の項目へ移ります。



《少年の部屋》

床をめくる(扉をくぐる)と、あなたたちは部屋の中に立っていました。今までと違って本物のように見えます。

部屋には本棚や机があり、ベッドには一人の少年が横になっています。近くのベッドデスクには一冊の本が置いてあります。

そして窓の前には先ほど見たのと同じようなイーゼルが畳んで立てかけてあります。



探索者が子供、もしくは幼く見える場合:「君たちは誰?遊びに来てくれたの?」

探索者が大人の場合:「誰?お医者さんですか?」

名前を訊く→「僕は古谷春記っていうんだ」

絵本について→「これは僕が描いている絵本だよ」



その本を開いて見てみると、1枚目は湖の絵、2枚目は森の絵、3枚目は海の絵で、あなたたちが見てきた世界そのままです。しかし文章は書いてありません。

4枚目はあなたたちが描いた絵そのままです。あなたたちが本を見る間、春記は寂しそうな顔をしています。

「登場人物が思いつかないんだ。だから、どういう話にしたらいいか思いつかなくて。僕には友達がいないんだ。小さいころから病気で、家にいたから」

KPへ:ここで探索者にRPしてもらい、彼に何をアドバイスするか聞いて下さい。探索者が絵本の世界を「楽しかった」と言えば春記は興味津々に冒険の内容を訊くでしょう。探索者の話を聞きながらメモを取るなどして、絵本の登場人物を探索者にすることに繋げて下さい。ちなみに人魚は絵本の世界に勝手に住み着いたもので、春記が描いたものではありません。



→絵本の登場人物を自分たちにしたらいいと言う、もしくは探索者がどういう冒険をしたか語るなど

「君たちを主人公にしてこの絵本を書いていい?そうしたら、一番最初に君たちに読んでほしいな」

→死んでいることを伝える

春記は不思議そうな、かつ悲しそうな顔をしてから「君たちの家族や友達はいる?よかったら、その人たちに贈りたいな」と言います。

KPへ:ここで春記から探索者に届け先の住所や名前を訊いて下さい。床がめくれている部分はありませんが、何でもありにしても構いません。この部屋で夢見技能を使えるか否かもKPの好みで構いません。

探索者が部屋の窓や扉から出たタイミングで次の項目へ移ります。



《エンディング》

◯◯さん、◯◯さん、◯◯さん(探索者の大事な人の名前)が目をさますと、そこは自宅のベッドでした。

あなたたちは夢を見ていたようです。夢の中では自分の大事な家族や友人が楽しそうに遊んでいたのをありありと思い出すことができます。

寂しいような、楽しいような、不思議な気分であなたたちはいつも通りの日常を過ごしますが、あの夢を忘れることはありません。

ある日、あなたたちの元に包みが届きます。水玉模様の包みにリボンがしてあり、差出人は「古谷春記」となっています。

包みを開けてみると、そこにはあの夢で見たのと同じ絵本と一通の手紙が入っていました。絵本の表紙には「◯◯ちゃんと◯◯さんと◯◯くんの話」(探索者の名前)と書かれています。

あなたたちには読む前からその絵本の内容が想像できることでしょう。

「題名 -無題-」おしまい。

KPへ:「探索者の大事な人」は前の項目で探索者が絵本を送りたいと名前を挙げた人物です。絵本の内容はシナリオ内での探索者の冒険そのままです。手紙は春記からで「突然すみません。不思議な夢を見たので、夢の中で聞いた住所や名前で調べてみたら…」というような書き出しです。PLに伝えても伝えなくても構いません。探索者への報酬はありません。



7.生存探索者用の資料

背景と概要はロスト探索者用とほとんど同じですが、生存探索者の場合は完全なドリームランドになります。導入の時点で探索者は夢の中におり、本を開くことでドリームランドに入ります。



《導入》
ある日、あなたたちがいつもの場所で目を覚ますと、枕元に見覚えのない包みが置いてあります。水玉模様の包みには何も書かれておらず、リボンがかけられています。
包みを開けると中には一冊の本が入っていました。本の表紙にも何も書いてありません。
あなたたちが本を開くと、先ほどまでいた部屋とは別の世界に来ていました。

KPへ:探索者が本を開こうとしない場合は「あなたはその本を開くのが当たり前のように感じます」などと描写するといいでしょう。



これ以降はしばらくロスト探索者用の《導入》からと同じですが、夢見技能の成否については厳しくしてもいいかもしれません。また、探索者が春記に絵本のアドバイスをする際、無理に探索者を主人公にしなくても構いません。《エンディング》では探索者自身が目を覚まし、彼らがアドバイスした通りに書かれた絵本が届きます。

ドリームランドに来た時や驚くべきことが起きるたびに0/1程度のSANチェックを入れてもいいと思います。その際のSAN報酬はKPに任せます。



←戻 作者:うえ/(@ORC_ue)

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