シナリオ名《ダイハード-抵抗者-》


1.GMさまへ

これは「デッドラインヒーローズRPG」のシナリオです。GMは「学園マッドネス」を所持している必要があります。

登場する主なヴィラン組織はフォーセイクン・ファクトリーですが、PLには秘密にして下さい。

難易度は中程度と思われます。ご使用、ご改変、動画化はご自由にどうぞ。

2018.09.01…エントリーの「GMへの補足」に追記しました。本文の内容に変更はありません。



2.事前情報

リトライ:2

初期グリット:3

チャレンジ:2

クエリー:3

人数:3人

時間:ボイスセッションで3時間程度

トレーラー(任意):キミは自分が何者なのか答えられるだろうか。過去を失った時、人の存在は希薄になる。それでも世界は待ってくれない。襲い来る試練を躱しながらキミは闇雲に走っていくだろう。ヒーローよ、最後まで抵抗せよ。



3.エントリー

【PC1】

 キミは記憶喪失に陥っている。しかも何故だか知らないがヴィランに追われている。キミはガーディアンズ・シックスに保護され、護衛がつけられることになった。キミの本名と住所、家族がいることなどは判明したが、何を聞かされてもピンとこない。

※新規の場合…キャラクターシートは完成済みで提出する。シナリオ上の設定がつくのでご注意。

※継続の場合…世間に正体を隠しているヒーローに限る。家族にもヒーロー活動を隠していることが望ましい。

(GMへの補足:PC1はPC2・PC3から見ても一般人なのかヒーローなのかヴィランなのか、一切わからない状態になります。マスクマンなんかだと丁度いいかもしれません。ただし導入で素顔のまま登場するので、絶対に正体がバレてはいけない設定がある場合は避けたほうが無難でしょう。PLが慣れていない場合、新規のほうがやりやすいと思います。)



【PC2】

 キミはガーディアンズ・シックスから護衛の依頼を受けた。何でも護衛対象は記憶喪失のままヴィランに追われているらしい。キミは謎の人物、PC1と共に行動することになる。



【PC3】

 キミは役所に超人種手帳の更新に来ている。何らかの支援を受けていてもいいし、病気や怪我の際に治療の助けとなるものであってもいい。無事に更新が終わった時、チェインから連絡を受けた。

※PC3は超人種であることが一目でわかる容貌を持っていることが望ましい。



4.シナリオの概要

 フォーセイクン・ファクトリーの幹部、未来人バスカは永遠に生き長らえるためのリスク管理をしていた。そこで過去と未来とを行き来し、自身に危害を及ぼすヒーローを子供のうちに始末しようと目論んだ。

 計画を進めるうちに、彼は自身の率いるウィンターステイシスでは力が足りないと感じ始める。個人的なことを他の幹部に頼む気は起きなかったので、秘密裏にメイヘムの蘇生請負人リアニメイターと手を結んだ。計画が上手く行ったら新鮮な子供の死体を渡す、という条件だ。

 どこからか計画を知ったPC1はバスカを追い詰め、あと一歩のところでリアニメイターに記憶を消されてしまう。バスカは同じ過ちを繰り返さないよう、ゴッズ・4・ハイアのミズ・オペラを雇ってPC1を抹殺し、計画を遂行せんとする。ヒーローたちは死に抗う者に引導を渡せるのか。



5.シナリオ本編

《導入フェイズ》

【イベント1:喪失】

・登場キャラクター:PC1

・場所:路地裏



状況1

 気がつくとキミは走っていた。後ろから銃声と数人分の足音が聞こえる。何故こんなことになっているのだろう?ここが路地裏で、今蹴飛ばしたものがコーラの空き缶だということはわかる。ただここがどこか、自分が誰か、キミにはわからないのだ。

 キミは大通りに出て、とっさに大きな建物に逃げ込んだ。職員と思しき人たちが目を丸くしてキミを見ている。

「どうされましたか?――怪我をされているようですね」

 話によれば、ここはガーディアンズ・シックスと呼ばれる組織の本部らしい。キミは何一つピンとこないまま治療を受けた。



状況2

 所持品や顔からキミの素性が判明する。どうやらキミには家族がいるようだ。



エンドチェック

・PC1が自分の置かれた状況を理解した

・PC1がG6に保護された

解説:判明する素性はPCの設定に合わせて変更するといいだろう。大事なのはPC1がヒーローである事が誰にもわからないことと、PC1に家族がいることだ。PC1は導入の前にバスカと死闘を繰り広げ、リアニメイターに記憶を消されている。ハサミやペンといった日常で使う物のことは覚えているが、他のヒーローの名前やG6などの固有名詞はほとんど聞き覚えがない。



【イベント2:依頼】

・登場キャラクター:PC1、PC2(PC2視点)

・場所:任意(PC2の自宅等)



状況1

 ヒーローとして活躍するキミの元に、チェインから連絡が来た。

「ある人物を護衛して頂きたいのです。その方は記憶喪失のままヴィランに追われておりまして……詳しい事情は現在こちらで調査しております。どうかご助力をお願いできませんでしょうか」

 キミがガーディアンズ・シックス本部に向かうと、職員と共に一人の人物が不安そうに立っている。謎の人物、PC1だ。



状況2

 医者の勧めるところによると、PC1はなるべく今まで通りの生活を送るのがいいそうだ。とはいえ状況がそれを許すかはわからない。キミはPC1を家族の元まで送ることにしてもいいし、用心してどこかに匿うことにしてもいい。



エンドチェック

・PC2が護衛の依頼を受けた

・PC2がPC1と合流した

解説:G6ではPC1を一時的に保護することはできても、身元が判明している以上住まわせる訳にもいかない。GMは進行のためにもPCたちを外に出してほしい。



【イベント3:手帳】

・登場キャラクター:PC3

・場所:役所



状況1

 キミは役所に超人種手帳の更新に来た。何らかの支援を受けているのかもしれないし、病気や怪我の際に治療の助けになるものかもしれない。この手帳は近年知名度が上がってきており、取得する人が増えている。

 無事に更新が終わって帰ろうとした時、ガーディアンズ・シックスからの連絡が入った。

「現在、PC2さんがある人物の護衛にあたっています。護衛対象は記憶を失っており、謎のヴィランに追われています。そしてたった今判明したのですが、護衛対象を狙っているヴィラン組織は一つではないようなのです。PC2さんはガーディアンズ・シックス本部を出たばかりですので、合流して援護して下さいませんか」

 チェインは焦ったようにキミに頼み込んだ。



状況2

 キミはガーディアンズ・シックス本部方面に向かった。



エンドチェック

・PC3が手帳の更新をした

・PC3がG6からの依頼を受けた



《展開フェイズ》

【クエリーイベント1:人間】

・登場キャラクター:PC3

・場所:G6本部への道中



状況1

 ガーディアンズ・シックス本部に向かう道すがら、たむろしていた若者のグループがキミに声をかけてくる。

「ねーねー。すごい見た目だね、あんた。人外?」

「もしかしてアレ?最近話題の手帳とか持ってんの?見せてー、人外手帳!俺たち、あんたの不気味な外見のせいで精神的苦痛を受けてるんだからさあ」

 彼らは昼間からお酒が入っているのか、けたたましく笑いながらキミに絡んでくる。キミは少なからず不快に思うことだろう。すると、目の前の男女たちが突然吹っ飛んだ。

「脳が腐った猿どもめ。人助けのようで性に合わないが、こいつらは処分しないとな。放っておくと付け上がる」

 彼らを吹っ飛ばしたのは明らかに超人種の男――そしてヴィランだった。半狂乱で逃げ回る若者たちを光線銃で追い回し、殺そうとしている。キミはどうするだろうか?



状況2

 キミがヴィランを止めるのならば、彼は「おやおや、お偉いもんだ。果たしてこいつらに助ける価値なんてあるのかね」と呟いて逃げ去っていく。若者たちは呻いているが、命に別状はない様子だ。



エンドチェック

・PC3が若者に絡まれた

・PC3がヴィランと会話した

・グリットを1点得た

解説:ここで登場する若者たちは現人類の麻薬中毒者である。ヴィランはウィンターステイシスのメンバーであり、現在のティーチャーの思想に感化されている。つまり「超人種のための世界」を良しとしている者だ。このイベントで彼を捕まえることはできない。



【チャレンジイベント1:刺客】

・登場キャラクター:全員

・場所:G6本部前



状況

 PC1、PC2の元にPC3が駆けつけた。これからキミたちは目的地に向かうことになる。改めて状況の整理をしながらも注意深く進んで行くことだろう。

 その道中、キミたちは突如銃弾の雨に襲われる。どこからか狙撃されているのだ。わらわらと怪人たちが現れ、自らが被弾するのも構わず、キミたちの動きを抑えようと掴みかかってくる。



◯チャレンジ判定:同一のPCが複数の判定を試みることはできない。

・判定1.銃弾を避ける …<運動>or<知覚>1回 

・判定2.周囲の人を避難させる …<心理>or<作戦>or<隠密>1回

・判定3.刺客を倒す …<白兵>or<射撃>or<霊能>1回

失敗:現在グリットプールにあるグリットがすべて「使用済み」になる。

解説:この刺客もウィンターステイシスのメンバーである。PC1は体が勝手に動く形で、通常通りこの判定に参加できる。



【クエリーイベント2:口車】

・登場キャラクター:全員(PC2視点)

・場所:街中



状況1

 倒されたヴィランたちは不気味な笑みを漏らしている。

「PC2さんよ。どうやらあんたがそいつ(PC1)のお守りをしているようだな。そいつはメイヘムの会員だって、知ってるか?どうやら記憶を失っているらしいが……思い出したらあんたを襲うかもな。悪いことは言わないぜ、こっちに引き渡しな」

「何故盲目に守れる?そいつのこと、何にも知らないんだろう?」

 彼らはギラついた目でキミを見据えている。



状況2

「どうなっても知らないぜ」

 キミが断ると彼らは歯を食いしばり、激しく痙攣した後に絶命した。どうやら奥歯に毒を仕込んでいたようだ。



エンドチェック

・PC2がヴィランと会話した

・グリットを1点得た

解説:ヴィランたちがPC1の名前(ヒーローネーム)を呼ぶことはない。その方が彼らにとって都合がいいからだ。もちろん彼らの言うことはでまかせである。もしもPC2がPC1をヴィランに引き渡した場合、状況2を飛ばして次のイベントに移る。その際は適宜描写を変更すること。



【クエリーイベント3:契約】

・登場キャラクター:全員(PC1視点)

・場所:任意(街中等)



状況1

 素性の知れない刺客たちの遺体は運ばれていった。彼らはメイヘムの会員なのだろうか?

 一息ついたキミたちの前に、怪しげな老人が現れる。中には知っている者もいるかもしれない。メイヘムの幹部、蘇生請負人リアニメイターだ。

「私を知っているかね、諸君。私は蘇生請負人と呼ばれている。そこのお前さん」

 彼は節くれだった手でキミを指す。

「私は死んだお前の家族を生き返らせる代わりに、お前の記憶を頂いた。そういう契約だったからな。お前がメイヘムの会員であることも忘れて逃げ出してしまったので焦ったよ。お前の家族を殺した組織に狙われているみたいだしねぇ……」

「こちらとしても面倒だ。望むのならば記憶を戻してやってもいい。その場合、家族は元通り……死体となるがね」



状況2a:戻す

「ひひひ!そうこなくちゃ。だけどタダじゃあない。何も私ががめついからじゃないよ。人魚姫の魔女だって、タダじゃ声を返さなかった。契約ってのはそういうもんさ」

 彼はキミに短剣を差し出す。

「なあに簡単だ。お前の手で家族を刺し殺すのさ。どうせお前の記憶が戻った時には死ぬのだから……末期の面倒くらい見ておやり」



状況2b:戻さない

「そうだろうねえ。今のお前ならそう言うだろうねえ……」

 リアニメイターはぶつぶつと呟く。



エンドチェック

・PC1がリアニメイターと会話した

・グリットを1点得た

解説:リアニメイターの言うこともでまかせである。彼は適当な話で場を繋ぎながらバスカの到着を待っている。



【チャレンジイベント2:好機】

・登場キャラクター:全員

・場所:クエリー3と同様



状況1

 リアニメイターの左右の空間が割れ、異形の怪人が姿を現す。フォーセイクン・ファクトリーの幹部、未来人バスカだ。キミたちは呆気に取られるかもしれない。バスカは別々の方向から二人現れ、互いに面食らった様子で顔を見合わせているからだ。

「まったく、どういう了見だい。どっちが私の依頼人だね」

 リアニメイターは呆れてぼやいている。

「私が依頼人だ。今すぐヒーローたちを殺すのだ」

 片方のバスカが言う。

「私はお前に用はない、リアニメイター。計画は中止だ」

 もう片方のバスカが言う。リアニメイターはやれやれと肩をすくめ、やる気を失ったかに見えた――が、注射器を構えてキミたちに向き直り、猛然と襲いかかってきた。



◯チャレンジ判定:同一のPCが複数の判定を試みることはできない。

・判定1.二人のバスカを仲違いさせる …<心理>or<交渉>1回

・判定2.リアニメイターの精神破壊剤に耐える …<生存>or<意志>1回

・判定3.記憶を手繰る …<追憶>1回 ※PC1のみ挑戦可能

判定1に失敗:決戦フェイズでもう1体の「未来人バスカ」がエネミーに加わる。

判定2、3に失敗:決戦フェイズで[孤立]を受ける。



状況2

 立腹した片方のバスカは時空の狭間に帰っていく。

 PC1は思い出す。キミの家族は一度死んでなどいない。ましてや、キミがメイヘムの会員であるはずがない。キミはヒーローだ。それもPC2、PC3と並んでこの世に燦然と輝く、零等星のヒーローだ。

 さらに、キミは記憶を失う直前のことを思い出す。バスカは過去と未来とを行き来し、自身に危害を及ぼすヒーローを子供のうちに始末しようと目論んだ。計画を知ったキミはバスカを追い詰め、死闘を繰り広げた。そして背中に激痛が走り――記憶を奪われたのだ。

「おやおや。どうやらPC1は記憶を取り戻したようだね……厄介な。バスカの計画が上手くいったら、私は新鮮な子供の死体を受け取ることになっているのに。たくさん、たぁくさんね……」

 リアニメイターはにんまりとしながら独り言を言った。

解説:片方のバスカは今回の黒幕だ。もう片方のバスカは、ここでヒーローを追い詰めると自分の身が危ないことを悟り、計画を止めに来ている。最初から意見が割れているが、ヒーローが上手くやらなければ協力してしまう。ちなみに過去に遡って幼少期のPC1を始末するのは、何らかのSF的理由で不可能だったのである。



《決戦フェイズ》

【バトルイベント:全開】

・登場キャラクター:全員

・場所:チャレンジ2と同様



状況

「まったく、煩わしい……お前たちが望むのならば、始末するのは現人類の子供だけにしてもいい。どうだね、PC3。随分嫌な思いをしたと聞いているぞ」

「お前たちに問うが、永遠の安寧が欲しいとは思わないのかね?日々戦いに追われ、ゆっくりコーヒーを味わう暇もないだろう。私とて努力しているのだよ。リスクマネジメントというやつだ」

 その場に残ったバスカは唆すように手を広げた。饒舌な彼に気を取られたのだろうか、キミたちが気づいた時には周囲に芳しい香りが漂っていた。

「ふむ、お気づきかね。私たちだけでヒーローを相手にするのは少々分が悪い。一度苦汁を飲まされたからな。ゲストを雇わせて貰ったよ」

 バスカの言葉と共に、踊るように現れたのはセクシーな美女――ミズ・オペラだ。

「いいドラマを拝見したわ。ちょっと無様なのが気に障ったけれど……お支払いして頂いた分は、きっちり働きますことよ」

 オペラはちらりとバスカを見ながら妖艶に微笑んだ。リアニメイターも臨戦態勢だ。

解説1:上記はチャレンジ判定に成功した場合のものだ。チャレンジイベント2の判定1に失敗した場合は、二人のバスカがかわるがわる喋っても面白いだろう。



解説2:敵は未来人バスカ、蘇生請負人リアニメイター、ミズ・オペラ、ヴィランメンバー×3体。GMの好みでヴィランメンバーのうち1体をクエリーイベント1に登場したヴィランにしてもいい。

PCはエリア1か2に配置。バスカとリアニメイターは4、オペラとヴィランメンバーは3に配置する。



戦術

・バスカ(P.191):《精神爆弾》で攻撃し、《リセット》で妨害する。

・リアニメイター(P.203):《透明になる薬》で自身やバスカを隠密状態にし、《注射》で攻撃する。状況やGMの解釈によっては、ヴィラン側のライフが0になった際に《死者蘇生》を使用しても構わない。

・オペラ(R2/P.111):まず《洗脳演劇》で狼狽状態にする。さらに《妖艶な香り》で朦朧状態にした後、《寄生虫の棲み家》で攻撃する。リアニメイターの《注射》も考慮に入れること。

・ヴィランメンバー(P.218):射程内のPCを無作為に攻撃する。



《余韻フェイズ》

下記はヒーローが勝利した場合の描写。



「何故だ……何故、潰しても虫けらのように這い上がってくるのだ……!お前たちにならわかるはずだ……永遠の命の、す、素晴らしさが……」

 未来人バスカは急激に老いていき、別人のように萎んで息絶えた。



解説バスカが絶命するのは、能力値や外見からくる筆者の個人的なイメージである。

以下自由。下記は全員の結末の例。PCは成長点(最大9点)を得る。



全員の結末

 疲れ果て、傷つき、時に誤解され――それでもなお、キミたちは立ち上がる。まるで不死身であるかのように。まるで運命に抗うかのように。ここに一人、死に抗おうとした者がいた。彼は自らの弱さに負け、この世から退場した。いつか再びキミたちと顔を合わせる時まで。

「ダイハード-抵抗者-」終



←戻 作者:うえ/(@ORC_ue)

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