シナリオ名《インコンビニエンス・ストア》



1.KPさまへ

これは「クトゥルフ神話TRPG」のシナリオです。舞台は現代日本を想定しています。現代であれば改変可能です。

易しいSAN回復シナリオですが、PCの選択によってはSANが大きく削れる可能性があります。

ご使用、ご改変、動画化はご自由にどうぞ。太字の部分が基本的に読み上げる、またはテキストで貼る部分です。



2.事前情報

舞台:現代日本

形式:クローズド

推奨技能:なし

準推奨技能:目星、交渉技能

推奨人数:1〜3人程度

発狂/不定/ロスト:可能性薄。選択による

時間:ボイスセッションで1時間程度

備考:継続探索者がおすすめ



3.シナリオの概要

 それぞれの理由で深夜のコンビニに来た探索者。求めるものを買って帰ろうとすると外で暴風雨が吹き荒れ出す。不思議と天気予報には出ていない、局地的なものらしい。探索者はしばしコンビニで籠城することになる。

 暇を持て余した店員がぽつぽつと話すことには、昼間に奇妙な客が来たらしい。その客は何も買わずにおもちゃのような箱を置いていったとのこと。

 探索者は簡単なパズルを解いて箱を開けることになる。箱の中に隠されたカードは探索者が本当に欲しい物を訊いてくるのだった。




4.背景

 外なる神ニャルラトテップは、何でも与えると言われた人間が何を欲しがるのか、また身に余る物が突然手に入った時に彼らの日常がどう変化するのか興味を持った。

 しかし用心深い人間に「欲しい物を与える」と言っても疑心を抱くに違いない。そう考えた邪神は子供でも解けるようなパズルを用意した。「パズルを解いたご褒美」という形を取れば人間も納得しやすいだろうと考えたのだ。彼は人間にとって身近なコンビニを舞台に選び、店長にパズルを託すことにした。



5.NPC

・須藤 祐介(すどう ゆうすけ):20歳。コンビニのアルバイト店員。

POW:10 DEX:9 APP:13 SIZ:12 INT:10 EDU:12



・鷲田 守(わしだ まもる):35歳。コンビニの店長。鋭い目つきをしており、やや気難しい。

POW:13 DEX:11 APP:9 SIZ:14 INT:14 EDU:16



6.シナリオ本編

《導入》

あなたは深夜のコンビニに来ています。(KPへ:ここで探索者に何を買うか・何をするか聞いてRPを挟んで貰ってもいいでしょう)

あなたが買い物を済ませて店を出ようとすると、突然唸るような暴風雨が吹き荒れ始めました。ガラス戸に雨が叩きつけ、外は暗くて何も見えません。



→外に出ようとする

外に出ようとするとドアから猛烈な風が吹き込みました。立っていることさえ難しく、あなたは一瞬でびしょ濡れになります。

そして嵐の影響で停電しているのか、街は真っ暗です。コンビニの電灯は相変わらず煌々と照っています。

KPへ:無理やり外に出ようとしても風で押し戻されてしまいます。誰かに連絡を取ると、こちらは何ともない晴れた夜だと言われます。

探索者が誰かを迎えに来させようとした場合は「コンビニに近づくと嵐に巻き込まれて危険かもしれない」「あなたと一緒に帰れなくなる可能性がある」と伝えてやめさせるのが無難でしょう。



店員が顔を曇らせてレジから出てきました。胸には『須藤』とネームプレートがついています。「すごい嵐ですね…台風がくるなんて予報はなかったのに…」

そして携帯を確認して首を傾げました。「あれ?台風の注意報、まだ出ていないみたいです」(探索者が確認しても同じ)

「危ないのでしばらく店内で待機して下さい。ここは災害時の避難場所でもあるので」



いつまで経っても嵐が止まないので、須藤は奥に引っ込んで毛布やカンパンや水を持ってきます。

お客が来なくて暇そうな須藤としばらく会話していると、彼はこんなことを話し始めました。

「そういえば昼間、変なお客さんが来たって店長が言っていました。おもちゃみたいなものを渡して、何も買わずに帰っていったとか…いたずらですかね」

どんな箱か→「うーん…店長が怒って捨ててしまったみたいで…」

※詳しいことは店長に聞かないとわからない



《店長の召喚》

そこで須藤は「あっすみません。店長を起こすのを忘れていました。今仮眠しているんですよ」と言って奥に引っ込みます。程なくして店長らしき男性が出てきました。

「いらっしゃいませ。何か災害が起きているようですね。わたくし店長の鷲田と申します。仮眠を取っていたもので、失礼致しました。何か必要なものがございましたら、災害用の準備がございます」

鷲田はそう言うと外を確認しています。「こりゃひどい!しかし台風なんて来ていたかなあ。通り雨にしては激しいですよね」と彼は言います。



→店長に変なお客の話を聞く

「ええ?変なお客さん?ああ…昼間の…いらっしゃいましたね。なんでそんなこと聞くんです?」とじろりと須藤を睨んで言います。

適切なRP、もしくは《交渉技能》成功:あれはお客様とは呼べないので、まぁ話してもいいですかね。 黒いローブっていうんですか、妙な宗教団体みたいな格好で。『今夜は私の客が来る。彼らに渡してあげるといいよ』とか言ってね。変なおもちゃを渡してきたんですよ。男だったと思いますねぇ

不適切なRP、もしくは《交渉技能》失敗:「まあ…いろんなお客さんがいらっしゃいますから」と言って答えようとしません。



KPへ:鷲田は店長という立場から、他のお客について話したがりません。「適切なRP、もしくは《交渉技能》」に成功した場合のみ、おもちゃが見たいと言えばバックヤードから拾ってきます。

探索者が浮浪者や子供などである場合は交渉技能にマイナス補正をかけてもいいでしょう。警察官の場合は無条件で信用する代わりに、バックヤードに案内して防犯カメラを見せてもいいと思います。ちなみに鷲田は探索者に見せるまで防犯カメラを確認していません。

防犯カメラの描写例:映像は数人のお客さんを写した後、黒い靄のようなものを捉えました。靄は入り口からまっすぐレジの前に来ており、鷲田がそれに向かって話しているように見えます。しばらくすると靄は出て行き、映像の中の鷲田はいつのまにか大きな箱を抱えていました。不可思議な映像を目撃したあなたは《0/1の正気度喪失》です。



《謎の箱》

鷲田が持ってきたのは子供用の知育玩具のような大きな箱でした。

六面体の五つの面に丸、三角、正方形、長方形、卵型のへこみがついており、残りの一面は扉になっています。中は見えません。



KPへ:へこみにはそれぞれ「丸:350ml缶 / 三角:おにぎり / 正方形:チ◯ルチョコ / 長方形:課金カード類 / 卵型:ゆで卵(鶏卵)」がはまります。すべて店内にあります。

図を見せてしまうと簡単なのであえて用意していません。探索者が何かを選ぶたびに「もう少し小さい」「もっと奥行きがある」という風にヒントを与えて下さい。

詰まった場合はそれぞれの売り場ごとに《目星》を振らせてもいいでしょう。



→五つ全てはめる

カチャリという音がして扉が開きます。中には(探索者の数)枚のカードが入っています。

カードの内容:パズルは楽しかったかな?ご褒美に心から欲しいものをこのカードに書きなさい。ただしお金では買えないものだ。特別に対価を払ってあげよう。ここでは買い物をしたら帰るしかない」

あなたが内容を読むと、カードに書かれた文字は蒸発するように消え失せ、バーコードがインクの染みのように浮かび上がりました。《0/1の正気度喪失》です。



KPへ:探索者がこの店から出るためには、求める物をカードに書いてレジに通す必要があります。名詞の形になっていれば何でも構いません。以下が予想される探索者の望みと処理例です。

選んだものによっては相応の正気度喪失を入れてください。強大な武器などのアイテムはデメリットを大きくして調整して下さい。



・「平穏な帰宅」→何も起こらず、無事に帰宅できる

・「平和」→1d6週間の平和な日常が約束される。その間に他のシナリオに出すかはPLと相談する

・「お金」→かばんや財布に入っている。もっと大金を望んだ場合は自宅に現れる。(お金はお金で買えないのでOK)

・「亡くなった人」→生き返る

・「ロストした探索者」→そのPLの探索者の場合は生き返らせてもよい。他のPLの探索者の場合は、店員がその探索者に見える。永久にその状態が続くかどうかはKPに任せる

・「恋人、友人など」→アドレス帳に見知らぬ名前があり、連絡を取れば最初から恋人や友人であったかのように接してくる

・「空想のもの、架空の人物、貴重な魔道書、AF」→手に入る

・「何かの破壊」→破壊される

・「職」→財布に見覚えのない名刺が入っており、自分の名前と会社名が書かれている。名刺に書かれた会社に行ってみると、元々そこの社員だったことになっている

・「強さ、頭の良さなど」→該当する能力値が1d3ポイント上昇する

・「何かの技能」→該当する技能値が3d10ポイント上昇する

・「家族の愛」→店まで迎えに来てくれる

・「欠損した体の部位」→五体満足になる



《エンディング》

あなたがレジにカードを通してもらうと、突然求めるものが手に入ったことがわかります(鞄の中が重くなります)。そして外の嵐は嘘のように止み、灯りも戻ってきます。

あなたは不思議な体験を胸にコンビニを後にすることでしょう。

ご来店ありがとうございました。「インコンビニエンス・ストア」クリアです。



《報酬》

SAN回復:1d6+2 (KPへ:多めに設定してあります。減らしても構いません。)

・コンビニで得たもの



7.付記

タイトルは「不便な店」という意味です。宝くじで大金が当たった方々の末路から着想を得ました。

これまでに何度か回したうち、一番多くカードに書かれたのは「平穏な帰宅」です。ある意味トゥルーエンドと言えるかもしれません。

探索者が何を得てどうなってしまうのか、ニャルラトテップになったつもりで楽しんで頂けたら幸いです。



←戻 作者:うえ/(@ORC_ue)

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